みどころ
第8章 よみがえる奈良・天平の美
明治初期、神仏分離政策の影響により、奈良の仏教美術は存続の危機に陥りました。この窮状の中で、南都仏画の真価を再発見したのがアーネスト・フェノロサと岡倉天心です。彼らは奈良天平の仏画を「日本美術の古典」として高く評価し、その優れた鑑識眼によって見出された奈良ゆかりの絵画作品は、現在、質・量ともに世界最高峰を誇るボストン美術館の南都仏画コレクションの中核を占めています。
フェノロサや天心が日本美術の精髄として絶賛した法隆寺金堂壁画は、昭和24年(1949)、保存事業にともなう模写作業の最中に発生した火災で焼損し、制作当初の色彩の多くが失われてしまいました。この痛恨の出来事は、のちに文化財保護法が制定される契機となり、現代へと続く南都仏画の歴史に深く刻まれています。
本章では、東京美術学校でフェノロサや天心の薫陶を受けた若き画家たちに焦点を当て、彼らが天平古画の模写を通じて得た着想をもとに、新たな美を生み出していく明治期の様相をたどります。さらに本展の結びとして、最新の写真科学技術によって焼損前の彩りがよみがえった法隆寺金堂壁画第六号壁の高精細カラー画像を紹介し、現存する壁画の比類なき価値を未来に伝えていく重要な機会にしたいと思います。
天平仏画をもとに明治期に復元された正倉院宝物、よみがえる天平の美
螺鈿槽箜篌 模造
天平仏画をもとに復元された正倉院の箜篌をもつ天平美人
重要文化財
天平の面影

最新の写真科学技術によって焼損前の彩りがよみがえった、カラー復元画像
参考図版